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満ちるのをやめた月


マチでは

相変わらず宴が続いていた


日が落ちて闇があたりを支配してもなお

まばゆく輝き続けるその姿に

ヒトは本物の夜を忘れつつあった


目の前のきらびやかな光は

あたかも天空を彩る星座のようでもあり

それは星々のかけらを見上げる

純粋なココロをも覆い隠していった


月は

いにしえより満ち欠けを繰り返し

夜ごと地をやさしさで包んでいた


ヒトはそれを

コヨミとして暮らしに取り込み

父なる太陽と母なる月に

深く抱かれて生きていた


賢明なるモノは

そのはからいに畏れと敬いを持って接し


月が姿をかくせば

静かに祈りを捧げ


煌々とあたりを照らせば

それを祝い


満ち欠けのドラマを

自らのイノチに重ね合わせていた


しかし、いつしか昼と同じ明るさを夜に得た人々は

もはや誰も月の満ち欠けを気に留めなくなった


月は、淋しかった


それでも辛抱つよく闇夜を照らし続けた


だけれど

どんなにときを重ねても

誰ひとり月の思いにきづくことはなかった


月は語りかけることばを失い

姿をかくしたのち

再び満ちることを、



やめた





それからずっとたったある時、

地上の三日月の島が激しくゆれた


決して裂けることがないといわれていた

大きな塊はあっけなく口を開け

恐ろしい姿があらわれた


巨大な光はそらまで届いた

月は、見ていた


大きな塊は月が満ちるのをやめて久しく

あたかも月の代わりであるかのように

夜になると地上をくっきりと浮かび上がらせ

人々は完全に闇を支配したと思っていた


しかし、それはまぼろしだった


完全なるマチはことごとく瓦礫と化し

人々は味わったことの無い混乱にいた


そして、夜になってはじめて気づいた


月が、無い


大きな塊がもたらしていたかりそめの光はおろか

当たり前にあったはずの月までがどこにも見当たらない


人々は、やっと、気がついた


月は、満ちるのを、やめていた


闇はどこまでもまとわりつき

もがくほどその奥底に沈められていく


おとなたちはなすすべを失い

呆然とたちすくみ

それまでの宴の日々を

ココロの底から悔やんだ


悔やんでも悔やんでも足りなかった


そんな時、つよい瞳の少女が立ち上がり


ちいさな声でいった


そうだ、月は欠けては満ち、満ちては欠けると聞いた

今日はもっとも欠けている夜に違いない

これから満ちてくる

かならず、満ちてくる


その声はまっすぐに月にとどいた


しばしのためらいののち

月は、少女の瞳のともしびに応えた


今から、また満ちる


月はそれからのち

再び満ちることを

決してやめなかった




Fin










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by pikabo | 2014-07-02 20:36 | ノート
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